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帝京大学 理工学部 情報科学科 通信教育課程を卒業しました

2022年9月を以て帝京大学理工学部情報科学科の通信教育課程を卒業しました。
www.teikyo-u.ac.jp

卒業確定の連絡を受けたのは9月20日ごろだったかと思います。



卒業証書・学位記

一般的な教育機関の年度は4月~翌年の3月までですが、帝京大学では9月卒業の制度があるため、9月での卒業が可能です。2023年3月まで学習を継続することも可能でしたが、卒業に必要な単位を満たしてしまったので何となくもう卒業でもいいかなと思い卒業することにしました。

私は2018年の4月に入学して卒業したのが2022年9月なので4年半学んでいたことになります。入学した当初は仕事も家庭もあるし、もしかしたら卒業は無理かもしれないなとぼんやり思っていましたが無事卒業できたのでほっとしています。

せっかく卒業できたので、なぜ大学に入ろうと思ったのかとか、通信制での勉強のことなど書いておきたいと思います。

入学前の状態

普段はプログラマとして仕事をしていて、主に組込ソフトとか通信プロトコルの実装やWebアプリ開発などの仕事などをしています。大学は元々文学部を卒業していたので、入学時は2年目からの編入で入学していました。

なぜ帝京大学通信制に入ろうと思ったか?

普段から仕事で必要な知識は学びながらこれまでプログラマとしてやってきましたが、プログラマとして日常で必要になるのはあくまで応用です。そのため数学やアナログ回路・ディジタル回路に関する基礎知識をきちんと勉強することがありませんでした。

いわばベースとなる基礎知識がない状態で仕事を長年してきたのですが、あるときグラフィックス関係の仕事を担当した際に、数学的な知識が不足しているためにあまり明確な成果が出せず個人的に悔しい思いことがありました。
また、近年のAIブームもあり数学の重要性などが叫ばれるようになったこともありなんとなく数学やらないとダメかな見たいな気持ちもありましたが、なかなか腰を据えて勉強できていない状況が続いていました。

自分は基本的にやる気のない人間です。お尻に火がつかないと動けないタイプの人間なので、「お金を払って学んでいる」という状況を作ることで勉強する動機づけをしたかったというのが入学の理由の一つです。

大学に入学してしまえば試験と単位取得というノルマが発生しますので、「お金を払って自分のお尻に火をつける」という一見誰得な状態を作り出していたわけですが、無事卒業できたし、入学していなければ絶対に勉強はしていなかったと思うのでこの戦略自体は成功と言ってよいと思います。

良かった点

数式を見ても発狂しなくなった

元々文系出身なので数学には苦手意識がありました。特に書籍に数式が出てくると脳みそが溶けだしていましたが、今では数式をみてもちょっと眠たくなるくらいには数学の苦手意識を克服できました。

成績はよくありませんでしたが、線形代数微分積分・数理統計学応用数学といった科目を勉強できたのはよかったです。*1

AI・機械学習には今はあまり興味はありませんが、仕事でそういった案件に関わる機会が増えてきており、その理論を数学や統計に関する知識を元に理解することができるのでこれらの数学系の勉強できたことは良かったと思います。

電気回路の勉強ができた

組込系のソフトウェア開発をしていると回路に関する知識が多少なり必要になることがあります。これまでアナログ回路の知識ががっつりと求められることはありませんでしたがやはり一般教養レベルでも電気回路のことを知っているとハードウェアエンジニアの方との会話がしやすくなるので電気回路・電磁気学・電子回路について勉強できたのは良かったです。*2

学割のメリットを享受できた

勉強以外の副産物的なメリットですが、商品やサービスの購入時に学割を受けることができるのでありがたかったです。
と言ってもYouTube Premiumくらいですが。

成績・GPAについて

卒業時点のGPAは2.45であまり芳しくない結果でした。
そもそも自分の場合、コンピュータサイエンスに関わる基礎的な知識を身につけたいという動機が強かったので、履修する上でGPAはほとんど気にしていませんでした。GPAという制度が無批判に日本の大学に導入されていること自体どうかと思いますが、それはそれとしてもう少し気にしながら勉強してもよかった気もしています。

ただし、正規の大学では履修期間中に初回・2回目の講義を受けてみて先生との相性や難易度、親しい友達の履修状況を踏まえて履修を取り消したり追加したりできますが、帝京大学通信制の場合、科目に関する情報はシラバスがあるだけで、講義の難易度などの具体的な情報はその時点ではわからないことが多いです。科目が難しい場合実際に課題に取り組んでみて、「あぁ、この科目このペースじゃ無理だわ...諦めよう」となりますが、そのころには履修登録期間は終わっていたりします。

あとこれは通信制に関わらず言えることですが、試験の成績となると知り合いの先輩や友達から過去問の情報を貰えるかどうかで大きく結果が変わってしまいます。通信制の場合当然ですが、部活やサークル活動で他の学生と連絡を取り合う機会はないので基本的には自力でしっかりと勉強しなければいけません。このこと自体は良いことかもしれませんが。

ちなみに単位の修得ができずに終わった科目が6科目もありそれらを除くとGPAは2.7程度になる計算になるので、それなりに勉強は頑張ったけど、成績はまぁまぁという結果です。GPAを気にする人は履修科目について情報取集と選択に気をつけた上できちんと勉強すればGPA 3は無理な数字ではないような気がします。

最終成績は以下のようになりました。

最終成績

おおむねAが多かったですが、理解が浅い科目やとりあえず単位が取れればいいかなと思った科目はBが多いです。
Cになった科目は勉強をさぼったというより勉強の量に比例して理解が深まらなかったという印象があります。

逆にSを取った科目についてはめっちゃ勉強したかというとそうではなく、むしろ全然勉強していません。プログラミング1~プログラミング4については課題をこなす以外の勉強時間は合計2~3時間程度しかかけていなかったと思います。

評価として、頑張らなくてもSが取れたり、めっちゃ頑張ってもCにしかならなかったりすることが往々にしてあるわけで、その点でもこのGPAという評価制度には強い疑問を感じます。

GPAという評価制度では、自分がよく知っている科目は評価が高くなりますが、よく知らない科目は逆に低くなりがちです。その基準自体は分かりやすくフェアな評価制度なのですが、一方でそもそも知らないことを知ろうとして大学に入ろうとするわけで、GPAが最初から高くなることが自明であれば、必ずしも大学で学ぶ必要もないような気がします。

他の学生の方との交流

他の学生の皆さんとの交流という点では、1~2年次の科目でスクーリング(対面式)の授業があり板橋のキャンパスで授業を受ける機会があります。その際に知り合った他の学生の皆さんと履修登録や試験に関する情報交換をさせて貰っていました。
通信制は基本的に独学なので、モチベーション維持のためにも時々近況を話し合う仲間がいるというのは心強いものです。
スクーリング以外では、科目習得試験は全国各地の試験会場で年に4回実施されますのでその際にも他の学生の皆さんと会うことがあります。

苦労した点

勉強できる環境を作ることは勉強することよりも何倍も難しい

自分の意志で勉強しているとは言え、勉強し続けるのはなかなか大変でした。特に数学と電気系の勉強はつらかったです。
結婚して子供もいる自分の場合、「仕事」「家庭」「勉強」に並行して時間を使う必要があり、しかも1か月や2か月といった短期間ではなく数年単位でこの3つのバランスをうまくとり続けないと卒業できません。

実際、これはなかなか大変です。勉強する以前に、勉強する時間を確保する大変さは勉強自体の大変さ以上です。

また、家庭があると家事や育児もしなければなりませんし、子供達が小さいと家が騒がしくなるので落ち着いて勉強するのは難しいです。線形代数の宿題で、4次の行列式を展開している横で子供が大声で叫びだしたときは気が狂いそうになりました。

家庭の経済格差が学力格差になり、学力格差が経済格差になることはよく言われていますが、社会人の立場で勉強してみるとそのことがよく分かります。
勉強できる適切な環境(机と椅子と集中できる時間)がなければ腰を据えて勉強はできません。

入学したときは「勉強しておけばよかった」と後悔するのではなく、「したいと思ったときにすればいい」と考えていましたが、若いうちに勉強しておくに越したことはありませんね。

勉強できる環境を作ることは勉強することよりも何倍も難しい

は1つの真理として心にとどめておきたいと思います。

体重が増えた

卒業までは履修している科目の勉強が続きます。夜中に勉強をしているとおなかが減るので自然と間食をすることが多くなります。その成果、入学時から体重が10kg程増えました。在学中は運動する時間が取れませんでしたが、元々は体を動かすのが好きなのでこれから痩せる予定です。*3

どうやって辛い状況を乗り切るのか

上記のように社会人として仕事と家庭を持ちつつ勉強をするのはとても大変です。
辛い状況が続くとモチベーションを失いそうになりますが、モチベーションを失わずに勉強するために

得意そうな科目・簡単そうな科目の単位を確実に取る

を3年目の2020年からは意識していました。こうすることで試験を受けるたびに卒業までに必要な単位数が確実に減っていき、家族にも共有することで家族の理解も得られやすくなると思います。

元々の私の方針は

自分が知らない分野で、比較的すぐに知識が役に立ちそうな科目から勉強しよう

を方針として履修する科目を決めていましたが、難しい科目を選んでしまうと十分勉強時間が確保できなければ単位が修得できなくなってしまいます。
卒業には124単位の履修が必要で、私は2年次編入での入学で32単位を認定済みでした。なので実際に修得すべき単位は92単位になります。

修得できた単位の推移ですが、

年度 習得単位数
2018年 26単位
2019年 12単位
2020年 22単位
2021年 20単位
2022年 12単位

という推移になりました。2019年は仕事が忙しく単位があまりとれなかったため、2020年からは上記のように方針を見直すことにしました。

上記の推移を見て思うのは

  • 1年あたりに取れる単位は恐らく16~30未満
  • 2年編入の場合ストレートにいけば3年で卒業できるが、これは実際のところほぼ不可能
  • うまく履修を組んで、計画的にコツコツと頑張れば4年では卒業できる

という印象です。

いまいちだった点

大学について良かったこともありましたが、いまいちだなと思うこともそれなりにありました。いくつか感じたことを挙げておきたいと思います。

指定の教科書が書店で買えない

既に出版が終了し、書店で販売されていない本が教科書として指定されている科目がいくつかありました。
メルカリとかAmazonの中古販売では入手できたけど、やはり通常の書店で新品が買えないような書籍を教科書に指定するのはちょっとおかしいと思います。

既に授業の掲示板などでも学生側から指摘がちらほら上がっていましたが、中古販売に頼っていると状況を理解した転売屋の的にされる可能性もあり非常に良くないので、これは大学・教員の方には真剣に捉えて貰いたい問題です。

応用系の授業が時代に追従できていない

応用系の授業、特に変化の激しいWeb系の内容を扱う授業では内容が現実に追従できていませんでした。下手をするとその辺のプログラミングスクール以下の内容かもしれません。
頻繁に授業内容を見直すのは大変な作業だと思うので、大学でこういった応用的な内容を教えるのはかえって難しいんだろうなと思いました。やはり大学(特に学部教育)では基礎的な内容を重視するという方針が良いのではないかと思います。

学費や勉強にかかった費用について

大学で学ぶとなると気になるのは費用面についてですが、帝京大学通信制

  • 初年度(入学金・学費): 約 200,000円
  • 2年目以降(学費): 約 150,000円

になります。

また学費以外にかかる費用ですが、

  • スクーリングを受ける際の交通費・宿泊費

これは関東の方は無視できるかと思います。

  • 教科書・参考書: 年間約 約20,000~40,000円

ということで、上記をどんぶり勘定で計算してみると卒業するまでの4年半で、80万円~100万円程度は費やしているのではないかと思います。

大学の雰囲気について

通信制なので、スクーリングの授業(2日程度)を除いて、大学に通うことは基本的にありません。
連絡事項は学生向けシステムのメッセージや掲示板を通してやり取りされます。
事務の方は基本的にはレスポンスが早く、質問に対しては比較的丁寧に対応してくださっていた印象があります。

教員の先生の印象はというと、おおむね丁寧に教えてくれる先生が多かったです。不明点について質問をすると土日であっても返信してくださる先生もいらっしゃいました。一方で小数ではありますが質問に対して高圧的に返答をする先生もいました。どの大学にも不親切・高圧的な先生はいるかと思いますが、通信制という学生の学習環境を踏まえると、この点はぜひ改善して欲しいと思います。

大学教育の将来について

通信制といっても基本的には独学で勉強になるので、私は教育系YouTuberの動画をかなりたくさん見ていました。分かりやすく説明してくれる動画も多く教育系YouTuberの皆さんにはとても感謝しています。どこかでこの記事とは別に勉強する際に閲覧したおすすめの動画の記事を書きたいと思います。

動画を見て勉強して思うのは、質の高い教育コンテンツがYouTubeのような動画配信サービスから溢れてきたとき、物理的な大学の存在はどうなっていくのかということです。

高価な実験器具などが必要になる学部・学科を除けば、大学で学ぶ知識は基本的に世界中どこにいても学ぶことができますので大学に行って席に座って講義を受けること自体の価値というのはどんどん下がっています。

今後重要になってくる大学の付加価値というのは、学生同士や先生との人間関係・人脈であったり、学びたい内容について対話・就職のサポートといったところになってくると思います。

学生や社会に向けた付加価値をどうやって提供し続けるのか、「大学 vs 教育コンテンツの戦い」 は既に始まっているので、今後世界の教育の在り方がどう変わっていくのかはとても気になります。

まとめ

色々と書いてみましたが、時間をかけてコンピュータサイエンスについて体系的に学べたことはおおむね満足しています。
勉強したことがすぐに役に立ったり直接的な結果として現れることはないかもしれませんが、社会人になってから時間をかけてひとつのことをやり切るというのはなかなかないことなので自信にもつながりました。

これからどうするのか

とりあえず勉強に使っていた時間が自由に使えるので、仕事をしつつ自分の好きなコードを書いたり、ブログの更新などぼちぼちとやっていきたいと思います。
あと英会話の勉強に真面目に取り組めたらと考えています。

元々フリーのソフトウェアエンジニアとして仕事をしていますが、理工学部を卒業したところですので、どこかよい会社があれば就職してもよいかなとぼんやり考えています。お仕事のお話があれば声をかけて頂けると幸いです。

追記

在学中によく見た教育系YouTuberの動画や書籍などについてまとめてみました。
mcommit.hatenadiary.com

*1:でも微分積分2の単位を取れていないので偏微分をちゃんと勉強できていない

*2:最終的に電子回路は単位は取らずに卒業してしまいましたが

*3:でも、生活習慣が少し変わってしまったので苦労しています